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「キャラクターの新たな姿を見られた満足感」が、購買意欲を引き上げる!若年層のIPコラボへの反応をアンケート調査・分析

株式会社Mintoは2025年1月に、15〜69歳の消費者1,364名に対して、IPコラボ*に関するアンケート調査を実施しました。この調査の目的は、消費者がどのようなIPコラボに対して好意的に反応し、購買・参加の欲求が高まるのかを分析・理解することです。
*ゲームやアニメ、マンガなどのキャラクター(IP)と、企業やブランドがコラボレーションし、共同で商品やキャンペーン、コンテンツを企画・製作・販売する取り組みのこと
IPコラボは今やマーケティング手法のひとつとして定着し、様々な商材・業界で活用されています。人気IPとコラボすることが、企業やブランドの認知や新規購入者、ファンの獲得に効果があることは明らかですが、その効果を最大限に高め、より多くのマーケティング効果を得るための方法論はまだ確立されきってはいません。
本稿では、そんなIPコラボの方法論の一部を解明することを目指しています。
調査結果サマリー
本調査の結果、若者(15〜29歳)のIPコラボに対しての反応について、際立った特徴が明らかになりました。
若者に買ってもらえる・参加してもらえるIPコラボのポイント
IPコラボの購買意欲・参加意欲を特に押し上げるのは「”アニメやマンガ、キャラクターの新たな姿を見られた”という満足感」でした。若者にとって、IPコラボは単なる販促ではなく「公式が認めた新たな体験や展開」として受け止められています。
若者がIPコラボを目にしたときの「コラボ商品の購入意欲の高まり、または、コラボキャンペーンへの参加意欲の高まり」は、全年代の平均と比べてもやや高い傾向がありましたが、特に「商品にコラボ限定のおまけが付く」形式のIPコラボは、顕著に購入・参加の意欲が高くなりました。趣味に自由にお金を使いづらい若年層にとって、出費をしたことでおまけグッズという目に見える対価を得られるIPコラボは「コスパがいい」と評価されていると思われます。
若者の男性はこの「商品にコラボ限定のおまけが付く」形式のIPコラボに対して購入・参加の意欲が高まるという傾向がより強く見られました。男性は収集欲があり、希少性・限定性の魅力に対しての反応がより強いことが伺えます。
一方で、若者の女性は「SNSで無料で応募できるキャンペーンが実施される」形式のIPコラボに対しても、購入・参加の意欲が高まる傾向が見られました。女性は、無料で応募できるという気軽さやお得感、キャンペーンを通じた企業や他者とのコミュニケーションを楽しんでいるためでしょう。
若者に企業を好きになってもらえるIPコラボのポイント
「コラボしている企業やブランドに対しての、愛着の高まり」を特に押し上げるのは【「意味のあるコラボだ」という納得感】でした。若者にとって、企業がIPの世界観や設定を理解し、ファンと同じ「目線」を持っていると感じられると、それが企業への信頼につながります。
「コラボしている企業やブランドに対しての、愛着の高まり」は、全年代の平均と比べてもやや高く、特に「SNSで無料で応募できるキャンペーンが実施される」形式のIPコラボは愛着の高まりが目立ちました。単に商品を販売したり、懸賞を実施するだけのIPコラボだと、コラボの文脈や背景を伝えきることができませんが、SNSアカウントやSNSキャンペーンを通じてそれを補強することができれば、よりIPコラボに意味付けができ、それが企業のロイヤルティ向上に寄与するものと考えられます。
“若者” について
若者(15〜29歳)について、定義とIP消費動向をまとめます。
“若者” の定義と、IP消費傾向
本調査では、便宜的に15〜29歳を「若者」と定義しています。
基本的に、IP消費額は実際・理想ともに世帯年収に比例する傾向が見られました。
では、収入(個人年収)が少ないと思われる若者は、IP消費額も少ないのでしょうか。実はそうではありません。
特に20〜29歳は、全年代中で30〜39歳に次いで二番目に実際のIP消費額が多い層でした。
この理由は、
①若者のなかには実家暮らしの者も多く生活費の自己負担割合が比較的小さいため、趣味・娯楽に対して支出しやすいから
②若者の支出における「推し活」の優先順位が高く、可処分所得の多くの割合をIP消費に費やしているから
の2点が挙げられます。
まとめると、若者は個人年収こそ低いものの、IP消費額は決して小さくないといえます。
若者に買ってもらえるIPコラボとは?
以下の分析はいずれも、アンケートにて回答した【過去3ヶ月以内に見かけた「企業やブランド」と「アニメやマンガ、キャラクター」とのコラボのうち、もっとも印象に残った】IPコラボを実施していたIP関連商品について、2024年の1年間の購入金額が1,000円以上だと回答した回答者のデータのみを対象としたものです。
これは、IPコラボに反応するのが基本的にはそのIPを認知し、好意を持っており、過去に関連商品の購買経験のある消費者のみだからです。
IPコラボの購買意欲を押し上げるのは【新たな姿を見られた満足感】
若者にIPコラボ商品を購入してもらう、あるいはIPコラボキャンペーンへ参加してもらうためにおさえるべきポイントとは何でしょうか。
本調査の結果、IPコラボの購買意欲・参加意欲*を特に押し上げるのは【「アニメやマンガ、キャラクターの新たな姿を見られた」という満足感】でした。
*「IPコラボの購買意欲・参加意欲」=「コラボ商品の購入意欲の高まり、または、コラボキャンペーンへの参加意欲の高まり」
ビジネスの経験が浅い若者にとっては特に、推しIPと企業・ブランドとのコラボは、単なる広告キャンペーンではなく、「公式から発信される新しい情報や体験」として受け止められることになります。「公式のお墨付きで、新しいビジュアルや設定、ストーリーが提示された」という喜びは、ファンアートや二次創作にはなく、公式コラボだけの特別感を伴うもので、ファン心理を強く刺激します。
とりわけ、原作の進展がなかったり、既に完結済みだったりするIPにとっては、このような「新たな展開」は原作からは得づらいこともあって、ファンのIPに対しての愛着や好意を呼び起こさせ、購入・参加に直結しやすいでしょう。
「新たな姿を見られた満足感」を与えるようなIPコラボの事例
ホテルニューオータニ×コードギアス 反逆のルルーシュ( https://www.newotani.co.jp/tokyo/stay/plan/geass/)
アニメの世界観をイメージした1日2室限定の豪華コラボレーションルームを用意。客室内では描きおろしのちびキャラたちがお出迎え。宿泊者専用のウェルカムボイスやお持ち帰りグッズも。
三越伊勢丹化粧品×新テニスの王子様(https://meeco.mistore.jp/meeco/tenipuri2025/)
アニメのキャラクター6名を「オフィシャルモデル」として起用し、各キャラクターのパーソナルカラーに合わせたリップをセレクト。洗練された黒一色のルックに合わせた描きおろしイラストがファンの心をつかむ。
ナンジャタウン×東京リベンジャーズ(https://bandainamco-am.co.jp/tp/namja/NEWS/events/20250110.html)
原作やアニメでは絶対に見られない、ねこ耳をつけた「バレエコアスタイル」をテーマにした描きおろしイラスト。グッズ、ミニゲーム、フードなどで多角的なタイアップを展開。
購買意欲の上がりやすいコラボ形式は「コラボ限定のおまけ付き」
様々なコラボの形式のうち「商品にコラボ限定のおまけが付く」形式のIPコラボでは、特に購買意欲・参加意欲が高まりやすい傾向が見られました。
これは、若者にとって「少額の投資で、確実に、限定感のあるIP関連商品が手元に残る」という体験が高く評価されているためだと思われます。
若者は収入が少ないため、IP消費に対しては他の年代よりも慎重であるはずです。そんな彼らにとって、少額の投資で確実に手に入る「おまけ」という存在は魅力的に映るでしょう。
クーポンや割引とは異なり、おまけにはコレクターズアイテムとしての付加価値があるため、物質的な価値以上の心理的な満足感(付加価値)につながりやすいのも特徴です。
そのため、特に若者向けのIPコラボにおいては、商品価格を下げるよりも、魅力的なおまけを付けることが売上につながるケースがありそうです。
男性は顕著に「コラボ限定のおまけ付き」を求めている
若者の男性だけに絞っても、「商品にコラボ限定のおまけが付く」形式のIPコラボで特に購買意欲・参加意欲が高まりやすい傾向は顕著でした。
若者の男性は、IPコラボ関連のおまけを収集することへの意欲が強いといえます。
その理由は、以下のようなものでしょう。
【希少性・限定性の魅力】コラボのおまけは「ここでしか手に入らない限定アイテム」である場合が多く、希少性・限定性を好むコレクター気質のある男性には、特に魅力的に映る。
【自己実現・自己表現な価値】男性は「自分の城」「自分のコレクション」を作りたいという心理があり、そこに飾るもののひとつとしておまけを捉える。
【投資の確実性・合理性】目の前のものを買えば今すぐにおまけが手に入る、という形式がわかりやすく、合理的にコストパフォーマンスを計算しやすいため、積極的な購買行動につながりやすい。
女性は「無料のSNSキャンペーン」の参加意欲が高い
一方で女性は、「SNSで無料で応募できるキャンペーンが実施される」ことによるIPコラボの購買意欲・参加意欲の高まりも、男性と比較すると際立って強いことがわかりました。
その理由は、以下のようなものでしょう。
【SNS利用ハードルの低さ】そもそも女性はSNSで推し活関連の情報収集や情報交換を積極的にしており、懸賞やプレゼント企画もこまめにチェックしている。
【参加の気軽さ・お得感】無料であり、かつSNS経由で簡単に応募できるSNSキャンペーンは”お得”に感じる。
【SNS映え・共有価値】キャンペーンに参加したことを友人やフォロワーと共有でき、かつ、もし当選すれば自慢や話題づくりにもつながる。
男女両方をターゲットにしたIPコラボのすすめ
特に男性を狙った「コラボ限定のおまけ」と、女性に好まれる「無料のSNSキャンペーン」を組み合わせ、男女両方に受け入れられるようなIPコラボを設計することもできます。
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(主に男性向け)IPコラボ商品を購入すると、必ずコラボ限定のおまけが手に入る
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(主に女性向け)IPコラボ商品を購入したことをSNSで写真付きで投稿すると、抽選で限定グッズが手に入るキャンペーンに無料で応募できる
若者に企業を好きになってもらえるIPコラボとは?
以下の分析はいずれも、アンケートにて回答した【過去3ヶ月以内に見かけた「企業やブランド」と「アニメやマンガ、キャラクター」とのコラボのうち、もっとも印象に残った】IPコラボを実施していたIP関連商品について、2024年の1年間の購入金額が1,000円以上だと回答した回答者のデータのみを対象としたものです。
これは、IPコラボに反応するのが基本的にはそのIPを認知し、好意を持っており、過去に関連商品の購買経験のある消費者のみだからです。
コラボ企業のロイヤルティを押し上げるのは【コラボの納得感】
若者に企業に対しての好意や愛着を持ってもらう(ロイヤルティを高める)ためにおさえるべきポイントとは何でしょうか。
本調査の結果、IPコラボ企業へのロイヤルティを特に押し上げるのは【「意味のあるコラボだ」という納得感】でした。
*企業へのロイヤルティ向上 = 「コラボしている企業やブランドに対しての、愛着の高まり」
コラボ先の企業やブランドが、IPのキャラクターや世界観をどれだけ理解し、尊重しているかは、ファンにとってのIPコラボ評価、特にコラボ先の企業やブランドの評価において、非常に大きな要素になります。
単に有名作品の知名度に便乗しただけのコラボだと感じられれば、それはむしろ商業主義的な取り扱いに対する反発を招きかねません。
一方で「なるほど、この企業はIPをこういうふうに捉えているのか・解釈しているのか」と、同じファン目線でそのコラボの仕方について納得できれば、同士としての共感や好意を抱きやすくなるでしょう。これが「意味のあるコラボだ」という納得感につながります。
「コラボの納得感」を与えるようなIPコラボの事例
サンシャイン水族館×アオのハコ(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000593.000059072.html)
原作で実際にキャラクターが初デートしたサンシャイン水族館とのコラボ。描きおろしイラストを使用した等身大パネルやフォトスポット、音声ガイド、限定チケットなど、作品の世界観に浸れる工夫が盛り沢山。
Zoff×呪術廻戦(https://www.zoff.co.jp/shop/contents/jujutsukaisen.aspx)
5名のキャラクターのイメージカラーやモチーフを取り入れたオリジナルデザインのメガネフレームを展開。細部にまでこだわったデザインが話題に。セットのメガネケースやメガネ拭きもオリジナルという徹底ぶり。
ZONe×ウマ娘 プリティーダービー(https://zone-energy.jp/campaign/2022/02/1298/)
ZONe史上初となる、コラボによる新フレーバーの開発・販売。ウマ娘のゲーム内に登場する回復アイテムをイメージした商品で、競走馬とエナジードリンクというIP・ブランドのマッチング率が高い。
企業ロイヤルティが上がりやすいのは「無料のSNSキャンペーン」
様々なコラボの形式のうち「SNSで無料で応募できるキャンペーンが実施される」形式のIPコラボでは、特にコラボ企業へのロイヤルティが高まりやすい傾向が見られました。
これは、SNSキャンペーンを実施することにより、ただ商品を販売したり、懸賞を実施するだけでは伝えきれないコラボの文脈やストーリーも含めて、SNS上で発信でき、拡散してもらうことができるからだと考えられます。特にコラボ企業の公式アカウントを使ったSNSキャンペーンでは、企業の個性も踏まえながら、より身近な距離感でのコミュニケーションが可能になります。
企業の公式アカウントからの発信だけではありません。SNSキャンペーンが拡散し、個人がそのキャンペーンに言及し解釈することによって、コラボが企業の手を離れて意味づけられていきます。これがコラボに独自のストーリーや設定を付け加えていくこともあるでしょう。
若者をターゲットにしたIPコラボを成功させるためのポイント
若者をターゲットにして、IPコラボの売上や参加者数を増やすためには、【「アニメやマンガ、キャラクターの新たな姿を見られた」という満足感】を演出する必要があります。また、若年男性には「商品にコラボ限定のおまけが付く」形式の、若年女性には「SNSで無料で応募できるキャンペーンが実施される」形式のIPコラボが、それぞれ有効です。
若者をターゲットにして、企業に愛着を持ってもらうようなIPコラボを実施するためには、【「意味のあるコラボだ」という納得感】を演出する必要があります。そのためにも、「SNSで無料で応募できるキャンペーン」を実施し、IPコラボの文脈やストーリー、背景設定などを十分にファンとコミュニケーションすることで、企業としての本気度やIPの理解度を伝えましょう。
調査概要
- 調査期間: 2025年1月10日(金) 〜 2025年1月15日(水)
- 調査手法: インターネット調査
- 設問数: 計25問(Background: 5問 / Screener: 4問 / Main: 16問)
- 回答時間目安: 約10分
調査サンプル
15〜69歳の男女1,364名を対象に、年齢・性別ごとのサンプル数が均等に近づくように回答を収集した。
データの前処理
Q3、Q7、Q11、Q15の4つの設問について、ライセンサー名(IP名)またはライセンシー名(企業名やブランド名)を回答していないもの、および、各設問が求める回答内容になっていないものを無効回答として集計・分析の対象から除外する処理を行いました。
一部の集計・データ分析において、1名の回答者の回答を2件の回答レコード(2件のIPコラボに関しての回答)として取り扱っています。
注意事項
本アンケート調査結果は、アンケート調査会社が提供するリサーチパネル(モニター会員)である15〜69歳の男女1,364名に対して実施したものです。ごく限られたサンプルにおける調査結果である点にご留意ください。
調査内容をご紹介・引用・転載される際は出典元として「株式会社Minto」を明記の上、ご利用をお願いしております。
(例)「出展:株式会社Minto」
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